永代供養墓が失敗する理由
そもそも、永代供養墓の失敗とは?
永代供養墓の事業は、「檀家様からの要望」という大前提で始められますが、多くの寺院の本音は、「少しでも事業収益を増やして、お寺の経営を安定させる」という目的があるはずです。
ですから、永代供養墓を建設したあとで、
- 建設費用はギリギリ回収できたが、その後の申し込みが伸び悩み、収益にはつながっていない
- 建設費用すら回収できる見込みがない
この2つが、いわゆる“失敗”とされる状態。
これから永代供養墓の事業に取り組もうとお考えのお寺様は、上記のようにならないように運営しなければいけません。
次は、こうした失敗について、もう少し具体的に解説いたします。
失敗例1
そもそも、お寺の立地が悪い
永代供養墓を選ぶ消費者は、「新しくお墓を建てたり、現在のお墓を将来的に維持するのは難しいが、無縁仏にはしたくない」という理由から、たとえば、
- 郷里に残してきた先祖代々のお墓を近くの永代供養墓にまとめたい
- 年齢とともに足腰が弱り、アクセスのよい都市部の永代供養墓にお墓を移したい
- 子どもや孫に迷惑をかけたくない
このようなケースが多いのですが、この消費者たちが散骨などではなく永代供養墓を選ぶポイントは、自分や家族の誰かが、できる限りお参りに訪れたいという気持ちがあるということです。
ですから、永代供養墓に求める条件も、自宅から近いか、交通の便が良いかなどが重要視される傾向があります。
はっきり言うと、この立地条件が良くないお寺の場合、それ以外の部分でよほど頑張らなければ、永代供養墓の運営が失敗してしまうことが多いので、私たちは積極的に建設をおすすめしておりません。
そのくらい立地はかなり結果を左右する重要な項目ですが、この事実に気がつかないまま永代供養墓を建ててしまい、失敗しているお寺もあります。
本来は、建設工事を請け負う石材店などの業者などが指摘してくれれば良いのですが、業者にとっては工事を受注するのが本業であり、そもそも、永代供養墓の立地がどうかを考えている余地はないでしょう。
こうしてまったく売れない永代供養墓ができあがってしまうのです。
失敗例2
初期投資が大きすぎた
寺院の環境や立地条件にもよりますが、永代供養墓の建設には、500~2,000万円ほど費用がかかるとされています。
建設工事を請け負う業者にとっては、工事の規模が大きければその分、売り上げも上がるので、中には1億円を超えるような最新設備を誇る永代供養墓を提案する業者もいるようです。
もし、深く考えずにこの提案を受け入れてしまえば、かけたお金に見合う収益が上がらず、失敗するという可能性はかなり高くなるでしょう。
よく考えてください。
売れると決まっているわけではない品物を、最初から大金をはたいて仕入れるのがどのくらいリスキーなことか。
ちなみに、施工業者という立場で永代供養墓を建てるというだけの契約なら、工事が完了すれば仕事は終わりです。
たとえ、建設後に申し込みがなくても、施工業者は知ったことではなく、責任を取る必要もないのです。
取らぬ狸の皮算用とはよく言いますが、この失敗は最初から“売れる”という甘い展望で、大きなお金をかけすぎたことが原因です。
これを防ぐには、多少割高になるとしてもまずは小さく始めて、事業が軌道に乗った時点で、追加増設が可能な構造の永代供養墓の建設を考えるべきでしょう。
お寺の規模にもよりますが、1,000万円を超える工事になる場合はとくに、慎重に検討することをおすすめします。
失敗例3
消費者のニーズを無視してしまった
どんな商品でもそうですが、消費者が欲しいと思うものでなければ需要は見込めません。
永代供養墓を検討している消費者にとっては、普通のお墓はもちろん、納骨堂や樹木葬、散骨なども選択肢に入っています。また、永代供養墓のある寺院も他にたくさんあります。
これらを様々な角度から比較検討し、消費者が納得できたものだけが申し込み(契約)されるわけです。
つまり、このときに選んでもらえないのなら、時代の流れや消費者のニーズを調査・把握できていない、またはそのニーズが企画・設計段階で形として反映されていないということです。
たとえば、
- 永代供養墓のデザインが極端に奇抜、あるいは無機質
- お墓自体の見た目や品質が安っぽい
- 寺院内の広さ、段差や勾配でお参りがしにくい
- 申し込みの際に、檀家にならないといけないなどの縛りがある
- システムや設備の割に費用が高い
など。
とくに、立地条件で不利なお寺は、よほど消費者にメリットを感じてもらえる提案ができなければ、本当に成功は難しいのです。
ですから、少しでも消費者に敬遠される可能性がある項目は、改善すべきと言えるでしょう。
失敗例4
宗教、宗旨・宗派の色が強すぎた
永代供養墓を開設するにあたり、様々な規定を定めることになります。その一つに、申込者の宗教、宗旨・宗派をどうするかという問題があります。
お寺のご住職からすれば、やはり宗教家という立場で、その宗旨・宗派の教義を多くの人に伝えたいといういう想いもあるでしょう。
しかし、この想いを押し付けるような規定をつくってしまうと、消費者は一気に息苦しく感じ、寄り付かなくなってしまいます。
日本人の多くは宗教、宗旨・宗派にあまり固執していないと言われています。しかし、不思議なことに、宗旨替えを強いられるような状況になると、急に抵抗感を覚える方が増えるのです。
こうした心理を理解せず、永代供養墓に申し込むには◯◯宗に宗旨替えをしてください、とか、お墓に 「南無阿弥陀仏」や「南無妙法蓮華経」などの言葉を彫刻しておくことなど、お寺側の主張を通そうとすれば、売れるものも売れなくなっていくでしょう。
消費者に受け入れてもらいやすいのは、やはり、「宗教、宗旨・宗派不問」です。
成功している永代供養墓を運営するお寺は、宗教、宗旨・宗派不問どころか、中には納骨式の立ち会いや読経を別のお寺の住職が行うことを許可している寛容なところもあります。
これは、消費者=申込者の気持ちに徹底的に寄り添うからこそできるサービスであり、他のお寺がやっていなければ、これだけで申し込みたいと思う消費者を確実に増やすことができるのです。
失敗例5
信頼感を与えられなかった
永代供養墓を求める消費者がすべて、普通のお墓が欲しくない、必要ないと思っているわけではありません。
様々な理由から、お墓を建てたり、将来にわたって維持するのが難しいと予想されるために、やむを得ず永代供養墓という選択をしたというケースも多いでしょう。
先祖代々にわたって守ってきたのに、自分の代で墓じまいをしなければいけない・・・
大切な両親や大好きだったおじいちゃん、おばあちゃんを永代供養墓に移さなければならない・・・
このときに背負う罪悪感や後ろめたさはかなり大きく、自身が最後まで責任を持って見届けることはできないが、せめて最良の選択をした=良い永代供養墓、良いお寺を選んだ、と思いたいのです。
ですから、お寺としては、申込者の心苦しさを理解して寄り添い、「私たちの永代供養墓で、あなたのご先祖をしっかり守ります。大丈夫、安心してください」という姿勢を見せる必要があります。
こうした姿勢は、たとえば、ご住職の人柄をはじめ、手入れの行き届いた境内や品質のしっかりした永代供養墓、お寺に漂う雰囲気などから、消費者が自然と感じ取って総合的に判断されることになります。
こうして信頼してもらえなければ、どんなに好立地なお寺でも、永代供養墓が売れないということはよくあります。
逆に言えば、立地の悪さをカバーするほど、“そのお寺を信頼できるかどうか”は重要視されているということです。
なぜ、このような
失敗が起きるのか?
ここまでは、永代供養墓の事業の失敗について、具体的にご紹介いたしました。
次は、なぜこのような失敗が起きてしまうのか、その原因について解説いたします。
永代供養墓の運営に関する認識が甘い
ご紹介してきたすべての失敗例の根底に共通しているのは、永代供養墓の運営に関する認識が甘いという事実です。
「建設さえしてしまえば、申し込みがくるだろう」「うまくやっている寺院があるから、うちも大丈夫だろう」
このような考えによって、事前に調査をしたり、専門家にアドバイスを求めたりすることなく、見切り発車で永代供養墓の建設に着手するお寺があとを絶ちません。
こうして失敗への第一歩が踏み出されるのです。
もちろん、最初から救いようのない事例だけでなく、着手する前にほんの少しの工夫や計画性があればうまくいったかもしれないのに、それを怠ったせいで失敗しているというもったいないケースも多いです。
そうならないように、まずは丁寧に謙虚に、また何よりも申込者に寄り添う姿勢を大切に持ちましょう。
一人で全部をうまくやろうと思う必要はありません。
最終的に、この事業がしっかり軌道に乗ればよいのですから、初めて取り組むことや不得意なことは誰かの力を借りるほうが効率が良い場合もあり、そのためには信頼できる専門家やパートナーを見つけることも大切です。
頼るべき相手を見誤っている
永代供養墓を建てたいと思っても、お寺様自身が工事をすることはできません。
ですから、まず初めにパートナーの候補になるのは、普段から出入りしている石材店かもしれません。
「永代供養墓もお墓の一つだし、まずはいつもの石材店に聞いてみるか」とこんな風に相談する流れが一般的には多いようです。
ほとんどの石材店は、永代供養墓の成功のノウハウなどは持っていません。
あるお寺のご住職の話によると、出入りの石材店に永代供養墓の相談をしたら、「ご住職が望む形を言ってくれればその通りにつくります」と言われたそうです。
・・・どのようにつくればよいのかわからないから相談したのに。
しかし、こんな状況であるにも関わらず、ご住職から依頼を受ければ、石材店は二つ返事で建設にとりかかるでしょう。
なぜなら、普通のお墓もなかなか売れないこの時代ですから、石材店としては永代供養墓の建設自体が自社の仕事、売り上げになるからです。
このとき、そのお寺の永代供養墓事業がうまくいくかどうかは、はっきり言って、石材店にとっては二の次です。
こうして、建設前に具体的な事業計画なども立てずに工事を進め、まるで公共事業の箱物のような永代供養墓ができあがるのです。
これは、頼る相手を間違ったと言うしかありません。
まとめ
このように、永代供養墓が失敗する原因を考えていくと、その中に成功につながるヒントがたくさん隠れていることに気がつくのではないでしょうか。
次は、永代供養墓の事業でしっかり収益を確保し、お寺の経営を安定させていくための秘訣をまとめてご紹介いたします。